長い休みと長い雨

 今やっている仕事の関係で、いわゆるお盆休み週がまるまる休みになった。

 ただそれは逆に言うと、ほかに振り替えようもない、無条件の休みだった。

 長い休みだ。


 なかなかある機会でもないから自転車を持ってどこかへ出かけようかと考えた。思うところはいろいろとある。東北横断鉄道路線の米坂線や陸羽東線・陸羽西線の沿線を走るのもいいし、岐阜の郡上八幡なんて昔から行ってみたい街だ。そこから西ウレ峠を越えてみるものいい。紀伊半島なんて海沿いも内陸もルートを計画し始めたら眠れなくなってしまうだろうし、未踏の九州なんて考え始めたらいちから情報集をする必要がある。まあそんなところは距離感もなく、どれだけ行程が必要なのかさえ想像がつかないけど……。

 これからイメージアップや情報収集から始めなきゃならない非現実的な場所はさておき、現実的な場所で出かけられればいいと列車や飛行機の空き状況、宿の空き状況を眺めたりする。じっさい列車は自由席を使うかもしれないし、宿だって行程の進み具合でその日に電話を入れるかもしれない。でも事前にどのくらいの混雑なのか、予約の状況から推し量ることができる。そのくらいの情報収集は必要だ。


 この時期に休みを得るのは長いあいだなかったことで、正直世の中がどうなっているのかよくわかっていなかった。ニュースで見るだけの休暇週間だった。だからウェブでの予約状況はどこも「×」印を掲げるという現実を無知の僕に突きつけると同時に、想像もしない宿泊料金を平然と並べて見せた。社会は僕を世間知らずと言うに違いない。そういうことだ。

 でも僕の自転車旅を決定的に足止めさせたのはそんな社会の現実というよりは、お盆休み週の天気予報だった。


 宿泊を含む自転車旅を計画したときに、出先で雨に降られることは想定するし、やむを得ない。でもわかっている雨に自ら向かっていく計画を立てることはまれだ。

 僕は8月に入ってから週間予報を追いかけた。傘が、並んでいた。

 一日進むごとに週間予報は一日の未来が見える。しかし増えた一日には傘マークが増えるばかりで、僕の出かけたいという意識をひとつも前向きにさせてくれない。特定の地域を限定してみているわけじゃない。それこそ東北も見れば岐阜も見ていた。


 天気予報が変わることのないまま、お盆休み週を迎えた。

 そして天気予報は見事なまでに的中した。雨が続く。

 もう長い一日単位でのサイクリングさえ望めない。直前の時間別天気を見て、時間単位の予定を立てるしかない。それがこのお盆休み週の結果だった。


 時間を選んで江戸川へ出かけた。

 僕の頭の上は明るい。晴れている。でも走っているうちに西の空が、やがて南の空が黒い、厚い雲に覆われてきた。もうすぐ、雨が、降る。


 今日で東京は20日連続の雨だそう。明日も続けば過去の記録に並ぶそうだ。


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